香川県の県庁所在地はなぜ高松市?香川市が存在しない歴史の真相
小学校の社会科や中学の地理で学ぶ47都道府県の基礎知識において、大人になってからもふと疑問に思われやすいのが「県名と県庁所在地名が一致しないケース」です。特に四国の玄関口である香川県において、県庁所在地は「高松市」であり、「香川市」という自治体は過去にも現在にも存在しません。
「なぜ香川県なのに県庁所在地は高松市なのか」「なぜ香川市にならなかったのか」という問いの背後には、明治初頭の廃藩置県をめぐる激動の地域再編や、江戸時代から続く城下町の誇り、そして古代から受け継がれてきた地理的名称の力学が複雑に絡み合っています。さらに、行政の中心地である現在の香川県庁舎は、日本が世界に誇る名建築として文化財的価値を極めて高く評価されています。本稿では、歴史資料や公的記録に基づきながら、その理由と知られざるドラマを徹底解剖します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:香川県の県庁所在地は「高松市」であり、江戸期に高松松平家が治めた高松城城下町を基盤として発展した四国屈指の中核都市である。
- 要点2:「香川市」が存在しない決定的な理由は、古代以来の「香川郡」に由来して県名が付けられた一方、都市の中心母体は「高松」の地名としてすでに確立していたためである。
- 要点3:巨匠・丹下健三が設計した香川県庁舎東館(旧本館)は戦後建築として初の国指定重要文化財に指定されており、歴史探訪のみならず建築ツーリズムの拠点としても必見の価値を持つ。
【歴史の深層】なぜ「香川市」ではないのか?廃藩置県と郡名の由来
香川県の県庁所在地をめぐる疑問を解き明かす第一の鍵は、明治維新直後に行われた廃藩置県の歴史と、古代の行政区分にあります。結論から言えば、香川郡と高松の由来が異なるレイヤーに根ざしていたことが、県名と都市名が分かれた直接の要因です。
令制国における「讃岐国(さぬきのくに)」は、平安時代初期の『和名類聚抄』にも記されている通り、大内郡、寒川郡、三木郡、山田郡、香川郡など複数の郡から構成されていました。このうち「香川郡」は讃岐国の中央部に位置し、現在の高松市中心部から南部にかけて広がる地域を指していました。地名の由来には諸説あり、樺川(樺川温泉付近)に流れる川の水が香気を帯びていたという伝承や、香木の産地であったという説などが郷土史料に記録されています。
一方の「高松」という名称は、室町時代から戦国時代にかけてこの地を支配した豪族・高松頼重の居城(古高松地区)に由来するとされ、天正年間に生駒親正が海に面した玉藻浦に新たな平城を築城した際、「高松城」と命名したことで一帯の呼称として定着しました。江戸時代に入ると、水戸徳川家の連枝である高松松平家が12万石で入封し、高松城城下町として政治・経済の中心地たる地位を不動のものとします。
明治4(1871)年の廃藩置県当初、旧藩領を引き継ぐ形で「高松県」「丸亀県」などが誕生しましたが、同年末の第1次府県統合によってこれらが統一された際、県庁が高松城内に置かれたにもかかわらず、県庁の所在する郡名をとって「香川県」と改称されました。当時の明治政府の方針として、旧城下町名や藩名をそのまま県名にすることを避け、郡名を採用する事例が全国で多発したためです。その後、1888年に高松町が市制施行した際、都市の伝統ある固有名称であった「高松」をそのまま引き継いで「高松市」が誕生したため、「香川市」という名称が生まれる余地はありませんでした。

噂の真偽を徹底検証|「官軍・賊軍への懲罰」は歴史的事実か?
長年、ネット上や雑学本などで広く囁かれてきた俗説に、「明治維新の際、旧幕府側(佐幕派・賊軍)に就いた藩は城下町名を県名にさせてもらえず、郡名などに変えられた」という県名と県庁所在地が異なる理由をめぐる懲罰説があります。
この説の信奉者は、「戊辰戦争で官軍に敵対した旧高松藩(高松松平家は水戸徳川家の分家で親幕派)だったから、高松県ではなく香川県に改称させられたのだ」と論証しようとします。しかし、近代法制史や行政史の公的文書・学術研究を突き合わせると、この懲罰説は明確に否定されます。
事実関係を精査すると、以下の歴史的実態が浮かび上がります。
- 恭順と赦免の早さ:高松藩は鳥羽・伏見の戦い直後に朝敵として追討令を受けましたが、藩主・松平頼聰はいち早く朝廷に恭順の意を示し、藩内の主戦派を処罰して金五万両を献納したことで、極めて迅速に赦免されています。
- 全国的な命名規則の統一基準:明治政府が明治4年11月に発した府県統合の方針では、都市名ではなく「管下の中心的な郡名」または「旧国名」を採用する基準が機械的に適用されたケースが多数派でした。
- 反例の存在:官軍の中心であった薩摩藩の鹿児島県や長州藩の山口県、土佐藩の高知県のように城下町名がそのまま県名になった地域がある一方で、官軍側でありながら郡名や旧国名に変更された例(例:尾張藩の愛知県、津藩の三重県など)も多数存在します。
歴史学会の定説としても、高松が香川県となった背景にあるのは「特定藩への政治的意趣返し」ではなく、行政区画の再編成における機械的な事務処理と、讃岐全域を統括する広域行政単位としての命名ルールによる帰結であることが証明されています。
【データ比較】四国4県および県名・県庁所在地不一致の構造分析
日本全国の47都道府県のうち、県名と県庁所在地名が異なる都道府県は19におよびます。四国4県をはじめとする全国の主要な不一致事例について、その成立背景と都市特性を客観的データで比較・整理しました。
| 都道府県名 | 県庁所在地 | 県名の由来 | 市名の由来と城下町背景 | 編集部の構造分析 |
|---|---|---|---|---|
| 香川県 | 高松市 | 古代郡名「香川郡」(県域中央部) | 高松城城下町(生駒氏・松平氏) | 行政単位として郡名を採用し、伝統都市名が高松市として維持された典型例。 |
| 愛媛県 | 松山市 | 古事記の神名「愛比売(えひめ)」 | 松山城城下町(加藤氏・松平氏) | 神話由来の国名を採用したため、城下町中心の市名と完全に二層化した構造。 |
| 徳島県 | 徳島市 | 徳島城城下町の島名(吉祥地名) | 徳島城城下町(蜂須賀氏) | 一致例。旧国名(阿波)ではなく城下町名がそのまま県名に昇格したパターン。 |
| 高知県 | 高知市 | 高知城の城郭名(旧河中山城) | 高知城城下町(山内氏) | 一致例。土佐全域を単一藩が掌握していたため、城下町名が全域呼称として定着。 |
| 石川県 | 金沢市 | 郡名「石川郡」(美川町に県庁移転歴) | 金沢城城下町(前田氏・加賀藩) | 県庁の一時移転に伴う郡名定着後、金沢に再移転したが県名がそのまま残存。 |
公的データから分かる通り、四国4県において不一致となっている香川県と愛媛県は、いずれも「広域を包含する古名(郡名・神名)を県名に充て、中枢拠点の城下町名が市制施行で市名となった」という共通のロジックを持っています。特に香川県は、1873年に愛媛県へ強制併合され、激しい分離独立運動を経て1888(明治21)年12月3日に47都道府県の中で最も遅く再置・独立した歴史があります。「香川」という県名は、讃岐の人々が自治権を取り戻す闘争の中で掲げ続けた、象徴的な旗印でもあったのです。

【名建築の実地検証】重要文化財・香川県庁舎と丹下健三のレガシー
香川県の行政中枢である香川県庁舎は、単なる自治体の事務棟にとどまらず、近代建築史において世界的な金字塔として君臨しています。昭和33(1958)年に竣工した東館(旧本館)は、世界的建築家・丹下健三の初期を代表する傑作であり、2022年に国の重要文化財に指定されました。戦後日本の庁舎建築としては全国初の香川県庁本館重要文化財指定という快挙です。
当時の金子正則香川県知事の「民主主義の時代にふさわしい、県民に開かれた県庁舎をつくりたい」という強い哲学に共鳴した丹下は、伝統的な日本木造建築の柱梁構造をプレストレスト・コンクリートによって見事に現代化しました。軒下にリズミカルに突き出る梁の意匠は、法隆寺などの古建築を想起させると同時に、機能的な開放感を併せ持っています。
2026年現在の現場取材および一般利用における見学ハイライトは以下の通りです。
- 1階ピロティと県民ロビーの開放感:壁を極力排し、ガラス張りと石畳が外部の庭園と連続する設計。戦前の権威主義的な役所建築を打ち破った空間デザインを肌で体感できます。壁面には猪熊弦一郎による陶板壁画『和敬清寂』が配され、空間全体が一つの美術館として機能しています。
- 香川県庁展望台見学のリアル:隣接する本館(地上21階建て)の展望スペースからは、高松市街地はもちろん、瀬戸内海に浮かぶ女木島・男木島や屋島の美しいシルエットを一望できます。入場無料で一般開放されており、市民の憩いの場として定着しています。
- 香川県庁アクセスの利便性:高松市番町に位置し、JR高松駅からことでんバスで約5分(「県庁・赤十字病院前」下車)、または高松琴平電気鉄道(ことでん)瓦町駅から徒歩約10分。高松城跡(玉藻公園)や中央通り商店街からも至近の距離にあります。
庁舎を訪れる建築ファンや旅行者のSNS・口コミでも、「庁舎とは思えない静謐な美しさに圧倒された」「現代の高層ビルにはない木組みのようなコンクリートの美学がある」といった感嘆の声が絶えません。高松を訪れた際には、高松城跡と並んで必ず立ち寄るべき文化遺産です。
【テスト対策&実用ノウハウ】香川県庁所在地の確実な覚え方
中学受験や高校受験、教員採用試験や公務員試験における香川県庁所在地テスト対策において、県名と所在地名が異なる都道府県は失点しやすい頻出ポイントです。知識を短期記憶ではなく、長期記憶として定着させるための実践的な香川県庁所在地覚え方と整理術を提示します。
1. イメージ連想記憶法(視覚化ギミック)
「香川」の「香」という字から連想される「うどんの香ばしいダシ」と、そびえ立つ「高い松(高松)」を頭の中で結びつけます。「香川で香る、高松の松」という五七調のフレーズで覚えることで、聴覚と視覚の双方から記憶を強固に固定できます。
2. 地理的・歴史的因果関係で論理記憶する
語呂合わせに頼らず、歴史的背景を理解する方法は、記述式試験や高校・大学入試の社会科で極めて有効です。「讃岐うどんの国=香川県」「四国の玄関口となった港町・城下町=高松市」という二層構造を整理し、「県庁を置くべき最大の都市は高松城下だったが、県名は旧郡名(香川郡)が付けられた」という論理的な因果関係を把握しておけば、試験中に度忘れすることはまずありません。
3. 近隣県とのセット比較暗記
四国4県を一括して覚えるアプローチも有効です。「徳島・高知は県名と市名が一致」「香川(高松)・愛媛(松山)は不一致かつどちらも『松』がつく」という共通点と差異に注目します。「四国で不一致なのは北側の『二松(高松・松山)』」とパターン化してインプットすると、混同を防ぐ強力なフィルターとなります。
【プロの結論】おすすめできる人・慎重になるべき人の判断基準
高松市および香川県庁舎を巡る歴史・観光フィールドワークにおいて、旅の目的によって満足度が大きく変わります。訪問を検討する際の判断基準を明確にしておきましょう。
- 深くおすすめできる人:
- 戦後モダニズム建築や丹下健三の設計思想、国の重要文化財を直に体感したい建築愛好家。
- 高松城(水城)の石垣や城下町の町割り、廃藩置県の歴史的痕跡をじっくり歩いて検証したい歴史ファン。
- 受験や知的好奇心の一環として、地名の成り立ちや地域のアイデンティティを深く掘り下げたい学習者・親子連れ。
- 注意・工夫が必要な人:
- 単なるテーマパーク的なエンタメやインスタ映えのみを期待している旅行者(現役の行政庁舎であるため、平日の執務環境への配慮が必要であり、派手なアトラクション等はありません)。
- 東館の内部詳細ガイドツアーを希望する場合、見学可能エリアや公開スケジュールが県庁の広報案内によって制限されることがあるため、事前の公式情報確認を怠ると外観のみの鑑賞で終わるリスクがあります。
【香川 県 県庁 所在地】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:香川県の県庁所在地はどこですか?なぜ「香川市」はないのですか?
A1:香川県の県庁所在地は「高松市」です。「香川市」が存在しない理由は、明治初頭の廃藩置県において、県域中央にあった古代の郡名「香川郡」から県名が採用された一方、都市の中心は江戸時代から高松城下町として発展していた「高松」の地名が引き継がれ、市制施行時にそのまま「高松市」となったためです。
Q2:香川県庁舎は見学できますか?展望台の利用条件や費用は?
A2:見学可能です。国の重要文化財である東館(旧本館)のピロティや1階ロビーは開庁時間内に自由に見学できるほか、地上21階建ての本館展望室は入場無料で一般開放されています。JR高松駅や瓦町駅からのアクセスも良好です。ただし、平日と休日で開館時間が異なる場合や、庁舎管理上の立ち入り制限区域があるため、訪問前に香川県公式ホームページ等で最新の開館スケジュールをご確認ください。
Q3:香川県は全国で最も面積が小さい県ですが、なぜ他県と合併しなかったのですか?
A3:明治初期の一時期、香川県は愛媛県に強制併合されていました。しかし、讃岐と伊予では産業構造や財政需要、地域文化が大きく異なり、道路改修や教育行政において旧讃岐側が冷遇されているという強い不満が住民の間に生じました。中野武営ら地元の指導者層が粘り強く「香川県復活運動」を展開した結果、1888年に悲願の再分離・独立を果たしました。この強い郷土愛と経済的自立性が、最小面積でありながら独立した自治体を維持し続けている源泉です。
まとめ:地名の由来を知ることで見えてくる高松の真価
「香川県の県庁所在地は高松市」という一見シンプルな事象の裏側には、古代の郡名に端を発する地理的アイデンティティと、高松松平家が築き上げた城下町の矜持、そして明治の過酷な統廃合を乗り越えて自立を勝ち取った讃岐の人々の熱い歴史が息づいています。
現在、高松市は瀬戸内国際芸術祭の玄関口として、また丹下健三の残した名建築・香川県庁舎を擁する文化発信都市として、国内外から高い評価を集めています。テスト対策の暗記知識として終わらせるのではなく、背後にある歴史的必然性と都市のストーリーに目を向けることで、瀬戸内の拠点・高松の魅力はより一層立体的に見えてくるはずです。 (出典: 香川 県 県庁 所在地(Yahoo!ニュース))