叫ぶマーモット動画の真相|おっさん絶叫の元ネタと本物の鳴き声を解剖
YouTubeやTikTok、各種SNSのタイムラインで、誰もが一度は目にしたことがあるはずの「叫ぶ動物」の映像。険しい山肌や柵の上に凛々しく直立し、口を限界まで大きく開けて「ア゛ァァァーーッ!」と中年男性のような野太い絶叫を山々に響かせるその姿は、爆笑動画の定番として世界中に拡散され続けています。
あまりの人間臭さに腹を抱えて笑ってしまう一方で、「野生動物が本当におじさんのような声で叫ぶのか?」「そもそもこの生き物はマーモットなのか、それともビーバーなのか?」と疑問を抱いた方も少なくないでしょう。本稿では、デジタルメディア編集部が発掘した一次情報をもとに、ネットカルチャー史に刻まれたアテレコ動画の誕生秘話から、野生本来の驚くべき生態系とリアルな鳴き声の正体までを徹底的に解き明かします。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:SNSで拡散された「おっさんの絶叫」は後から合成されたアテレコであり、元ネタは2015年にカナダの石鹸メーカーが撮影した野生マーモットの映像である。
- 要点2:本物のマーモットの鳴き声は「ピィーッ!」という小鳥や高音ホイッスルのような鋭い音であり、捕食者の接近を仲間に知らせる高度な警戒音である。
- 要点3:動画は「絶叫するビーバー」とも誤認されて広まったが、正真正銘のマーモットであり、プレーリードッグやビーバーとは身体構造も生態も明確に異なる。
【元ネタの真相】叫ぶマーモットのアテレコ動画は一体なぜ生まれたのか?
ネット上で爆発的な再生回数を叩き出し、今や世界共通のネットミームとなった「叫ぶマーモット」。この映像が地球上に初めて登場したきっかけは、2015年7月に遡ります。
カナダ・ブリティッシュコロンビア州のウィスラーにあるブラックコーム山で、手作り石鹸工房を営む「Lone Goat Soap Co.(@lonegoatsoap)」のアカウントがInstagramへ投稿した1本のショート動画がすべての始まりでした。ハイキングトレイルの木製フェンスにちょこんと乗り、周囲を見渡しながら立ち上がった野生のマーモットが、大きく口を開けて鳴くわずか数秒のクリップです。
撮影された原盤の映像を確認すると、マーモットが発しているのは「ア゛ーッ!」という濁声ではなく、「ピィッ!」という甲高い可愛らしい笛のような声でした。雄大なロッキー山脈の自然と、直立して一生懸命に声を張り上げる小動物の健気な姿に、当初は動物愛好家を中心に「愛らしい自然のワンシーン」として受け止められていました。
しかし、この映像に目をつけた海外の動画クリエイターの手によって運命が一変します。マーモットが口を真一文字から全開にする完璧なタイミングに合わせて、「海外の中年男性が魂を込めて絶叫した音声」を精巧にリップシンク(口パク合成)させたパロディ動画がYouTubeや当時の短尺動画プラットフォームVine、掲示板Redditに投下されたのです。
直立不動のコミカルな佇まいと、あまりにギャップがありすぎる「疲れたサラリーマンの魂の叫び」のような野太い濁声のアテレコは、言語の壁を越えて世界中のネットユーザーのツボを直撃。瞬く間に「叫ぶマーモット 動画 YouTube」や各種SNSで数千万回規模の再生を記録し、世界的なバイラル現象へと発展しました。

本物の鳴き声との決定的なギャップ|アルプスマーモットが叫ぶ理由と警戒音の生態
「おっさんの声」が作り物であると判明したところで、次に湧き上がるのは「では、野生のマーモットはなぜあのように口を大きく開けて叫ぶのか?」という生物学的な疑問です。
結論から言えば、マーモットが自然界で叫ぶ最大の理由は、コロニー(群れ)の仲間に危険を知らせる「警戒音(Alarm Call)」を発するためです。威嚇やなわばり争いの際にも声を荒らげることがありますが、立ち上がって周囲を見渡し激しく鳴く行為は、天敵の接近に対する防衛システムそのものです。
スイスやフランスの高山帯に生息するアルプスマーモットや北米のマーモットは、イヌワシなどの猛禽類、あるいはキツネやオオカミ、ヒグマといった肉食獣を主な天敵としています。彼らは地下に複雑な巣穴を掘って家族単位のグループで暮らしていますが、外で見張り役を務める個体が天敵の姿を視認した瞬間、見晴らしの良い岩場や倒木に登り、全身全霊で危険信号を周囲に響かせます。
その実際の音声は、人間の耳には「鋭いホイッスル」や「小鳥の甲高いさえずり」にしか聞こえません。あまりに突き抜けるような高周波であるため、北米の先住民や開拓者たちはマーモットのことを「ホイッスル・ピッグ(Whistle Pig=口笛を吹く豚)」という俗名で呼んでいたほどです。
さらに動物行動学の研究データによれば、マーモットは脅威の種類によって鳴き声のパターンを明確に使い分けています。上空から猛禽類が急降下してきた際は仲間に即座の避難を促すために「単発の鋭く短いピピッ!」という高音を放ち、地上を徘徊する肉食獣を発見した際は警戒を継続させるために「リズミカルに連続するピィー、ピィー」という警戒音を鳴らし続けます。動画で見られる大口を開けた姿は、まさに仲間の命を守るために命がけで高周波の警報を放っている瞬間なのです。
【徹底比較】マーモット・プレーリードッグ・ビーバーの決定的な違い
ネット上でこのミームが拡散される過程で、もうひとつの大きな混乱が生じました。動画のタイトルに「絶叫するビーバー」と誤記されたり、「プレーリードッグが叫んでいる」と混同されたりした事象です。日本のピクシブ百科事典などでも「絶叫するビーバー」という項目名で定着してしまった経緯があります。
これら3種の動物は、いずれも齧歯目(げっしもく)に属するずんぐりとした哺乳類ですが、生息環境、体格、鳴き声の性質はまったく異なります。違いを客観的なデータで比較整理しました。
| 比較項目 | マーモット(動画の主) | オグロプレーリードッグ | アメリカビーバー |
|---|---|---|---|
| 生物学的分類 | リス科 マーモット属 | リス科 プレーリードッグ属 | ビーバー科 ビーバー属 |
| 平均体長・体重 | 約40〜65cm / 3〜8kg (かなり大柄で太っている) | 約30〜40cm / 0.7〜1.5kg (小柄でスリム) | 約70〜100cm / 15〜30kg (大型・平たいオール状の尾) |
| 主な生息地域 | 山岳地帯・高山ツンドラ (標高の高い岩場や高原) | 北米の大平原(プレーリー草原) | 森林地帯の河川・湖沼・湿地 |
| 鳴き声の特徴 | 極めて鋭い高音の「ピィー!」 笛の音にそっくり | 子犬に似た「キャン!キャン!」 (名前の由来でもある) | 警戒時は「平らな尾で水面を強く叩く音」 滅多に大声で叫ばない |
| ネット誤認の理由 | 元ネタ動画の主役。茶褐色でずんぐりしているため混同されやすい。 | 直立して叫ぶポーズ(ジャンプコール)が類似しているため誤認。 | 初期の転載者が「ビーバー」と誤って英題を付けたことで誤認が定着。 |
表を見れば一目瞭然ですが、水辺にダムを築く水生哺乳類のビーバーは、陸上で二足立ちして天に向かって叫ぶような行動は基本的にとりません。ビーバーの警戒行動は「平らな尾を水面に叩きつけてバシャーンと炸裂音を立てる」スタイルです。あの動画の主は、間違いなく高山地帯に暮らすマーモットです。
世界中で愛される背景|海外ミーム文化と日本における受容
なぜこの動画は、単なる一過性のブームに終わらず、長年にわたってインターネット上で共有され続けているのでしょうか。そこには、デジタル社会特有の「エモーショナル・ミーム」としての親和性の高さがあります。
「月曜日の絶望」を代弁する海外のリアクション
海外掲示板RedditやXでは、この絶叫動画が「Monday Morning(月曜日の朝の気分)」「When you check your bank account(銀行口座の残高を見た瞬間)」「Debugging code in production(本番環境でバグが出た時のプログラマー)」といったキャプションとともに投稿されるのが定番となりました。
大自然の静寂の中で、無防備な小動物が唐突に人間の理性を失ったような大絶叫を放つシュールレアリスムは、現代人が心の奥底に抱える抑圧されたストレスや叫びたい感情を代弁する「感情の解放アイコン」として昇華されたのです。
日本国内におけるパロディとカルチャー波及
日本でも「気合の入った声で叫ぶマーモット」としてYouTubeやニコニコ動画でミリオン再生を達成したほか、様々な二次創作が生まれました。
ゲーム『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』に登場するポケモン「パーモット」が叫ぶファンアートがピクシブ等に投稿されたり、テレビCM(大阪ガスのプロモーション等)で叫ぶマーモットの構図がオマージュされたりと、広告・エンタメ界にも強いインスピレーションを与えました。日常の何気ない不満や気合入れを表現する際に、これほど視覚的・聴覚的にわかりやすい素材は他になかったと言えます。
一般に知られていない盲点とネットの誤解
叫ぶマーモットの動画を鑑賞・共有する上で、メディアリテラシーとして知っておくべき「2つの盲点」が存在します。
誤解1:マーモットは威嚇のために人間に向かって怒鳴っている?
動画を見た人の中には「撮影者に怒って威嚇しているのではないか」と解釈する向きもあります。しかし、前述の通りマーモットが高台で直立して叫ぶのは、天敵を発見した際の警戒音(危険の共有)です。人間を縄張りから追い払おうと威嚇しているのではなく、「おい、あそこに怪しい巨大な生き物(人間や猛禽類)がいるぞ!みんな隠れろ!」と地下の仲間に全力で警告を発しているシチュエーションがほとんどです。
誤解2:「おもしろ動物動画」の裏にある野生のストレス
近年の野生生物保護の観点からは、観光客がマーモットに接近しすぎて無理に叫ばせる行為への注意喚起も行われています。高山帯でマーモットが叫ぶということは、エネルギーを激しく消耗し、同時に自身が捕食者に狙われるリスクを冒している状態を意味します。「鳴かせて動画を撮るために近づく」といった行為は、彼らにとって深刻な生命危機ストレスとなるため、野生下での観察には適切なディスタンスが求められます。

【プロの結論】動物ミーム消費の心理構造と私たちが受け取るべき教訓
「叫ぶマーモット」のバイラル現象は、メディア社会心理学の観点から非常に興味深い構造を示しています。
人間には古くから、動物や無機物に人間の感情や人格を投影する「擬人化(Anthropomorphism)」の本能が備わっています。小動物の鳴き声を人間のリアルな「おっさんの怒号」にすり替えることで生じる認知的不協和とギャップこそが、爆発的な笑いとバイラルの原動力でした。
しかし、エンターテインメントとして笑い楽しむ一方で、私たちは「ネット上の編集された現実」と「生命の本来のありのままの事実」を冷静に切り分けるリテラシーを持たねばなりません。
【鑑賞と向き合い方の判断基準】
- 健全に楽しむスタンス:アテレコという創作カルチャーのユーモアを理解し、日常のストレス解消のコミュニケーションツールとして笑顔でシェアする。
- 知的好奇心への昇華:「本当の鳴き声は小鳥のような高音である」という生物学的ファクトを知り、過酷な高山で群れを守り抜く野生生物の驚異的な生存戦略へリスペクトを払う。
フェイクや過剰演出が溢れるデジタル空間だからこそ、ユーモアの背景にある「元ネタの真実」を知ることは、ネット文化をより深く、知的に味わうための確かなリテラシーとなります。
【マーモット 叫ぶ】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:マーモットが実際におじさんのような野太い声で鳴くことは絶対にないのですか?
A1:絶対にありません。マーモットの体格や声帯の構造上、発せられる音は周波数の高い「ピィーッ!」という鋭い高音(ホイッスル音)に限られます。人間の中年男性のような低音の唸り声や濁声を出すことは生物学的に不可能です。
Q2:日本国内の動物園でマーモットの鳴き声を聞くことはできますか?
A2:国内でマーモット(アルプスマーモットやボバックマーモットなど)を常設飼育している施設は極めて少なく、一般的な動物園で見かける機会は多くありません。ただし、近縁種であるオグロプレーリードッグであれば「上野動物園」や「アドベンチャーワールド」など多くの施設で飼育されており、立ち上がって鳴く様子(キャンキャンという鋭い声)を観察することができます。
Q3:YouTubeなどで他に有名な「叫ぶ動物」のおもしろ動画はありますか?
A3:人間のような声で「メェェェー(あ゛ぁぁぁー)」と絶叫する「叫ぶヤギ(Screaming Goat)」や、独特な威嚇音を出す「フクラガエル」、威嚇ポーズが可愛すぎる「コアリクイ」などが有名です。ヤギの絶叫はアテレコではなく本物の声であるケースが多い点も、マーモット動画との面白い対比となっています。
まとめ:元ネタを知れば野生のリアルとネットの面白さが2倍深まる
世界中を爆笑の渦に巻き込んだ「叫ぶマーモット」の真相は、2015年にカナダの山で撮影された無垢な野生動物の警戒行動と、海外クリエイターによる卓越したアテレコ技術が融合して生まれたネット史に残る傑作ミームでした。
本物の鳴き声は、中年男性の叫びとは正反対の「美しく鋭い小鳥のような高音ホイッスル」。その小さな体で仲間を守るために大自然へ警報を鳴らす姿は、アテレコ動画の面白さに決して引けを取らない生命の尊さを教えてくれます。次にあの絶叫動画を目にしたときは、腹を抱えて笑うとともに、高山を生き抜く勇敢なマーモットの真の姿に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。 (出典: マーモット 叫ぶ(Yahoo!ニュース))